ナイトキャップ

およそ10数年ほど前のことである。それはフイをつかれたように訪れたのだった。

「パパの枕はクサい」

なんだかCMやらドラマやら、なんやらで一度は聞いたことがある言葉。

もちろん子供の場合、まるで言葉を選んではいない。

それこそ直感的な忌憚のない意見で、これっぽっちも忖度していない。

比較対象はママ。ママの枕と比較して、パパの枕は臭いという単純な話なのだが、それを言葉として浴びせられると・・・。そりゃね、あたし、リンスもフローラルな香りではありませんわよ。ゴリゴリのメンズ用のサッパリしますわ系シャンプーやリンスです。ま、歳も重ねれば加齢臭やらもするのかも知れない。


・・・いや、認めたくはない。相当気を遣って生活をしているのだ。ふと、自分の枕を匂ってみる。枕カバーも頻繁に洗ってるし・・・うーん、臭いのかな・・・。

ジワジワと絶望的な破壊力となって後から効いてくる。あたしはこういった攻撃に弱いのだWWWW。


ある日、「お猿のジョージ」を子供に読んで聞かせていた。誰もが知ってるお猿の他愛もない話なのだが、この話には「黄色いおじさん」と呼ばれるジョージの飼い主がちょいちょい出てくる。基本、探検家のような格好をしているおじさんは持ち物が黄色い。

ま、これはこれで良い。着目点はそこではない。話が進み、ジョージとお風呂に入って、就寝。この時、まさにこの時。「これなーに?」子供が指差す黄色いおじさんは、黄色いパジャマに、三角巾の帽子を被っている。


ナイトキャップだ。

日本人には馴染みのない三角形の帽子、なぜ寝る時に被って寝るんだろうか・・。

すると、子供が「サンタさんの帽子に似てるね」というのだ。

ま、まさか!この子は天才なのか(笑)。

そうだ、サンタさんの被る帽子もまさにナイトキャップ。


調べてみると、ナイトキャップの歴史はは古く中世ヨーロッパまで遡る。暖房がなかった時代に防寒目的に使用されたり、シラミを防止するためにかぶられていたそうだ。中世ヨーロッパでは寝るときはカツラの代用品で利用したり寝癖を防止したり、いろいろ役割があったんだね。

近年は睡眠中の髪や頭皮へのダメージを防ぐ「美髪効果」もあるらしく、欧米文化ではナイトキャップは一般的なパジャマと一対だ。

それではなぜ、日本にはこのナイトキャップ文化は根付かなかったのだろうか。
よくよく考えてみると、日本ではドラえもんのスネ夫がナイトキャップを被っている。

そーか、日本にナイトキャップ文化はアニメなどで伝わり、「ちょっとハイカラな欧米かぶれな文化」として敬遠されてしまったのではないだろうか。江戸時代まで木の枕で寝てたし、昭和は蕎麦枕が大流行するほど、やわらかでフカフカな枕を毛嫌いしてきた文化だもんな。

今思えば、子供の頃ナイトキャップを被る家庭なんか見たこともなかったしなぁ。もし、修学旅行でナイトキャップ被ってしまったら、次の日あだ名は「お坊ちゃん」に書き変わるほどの毛嫌いはされていたのかも知れない。

話を戻そう。俺は、グローバルな人間なのだ(笑)。黄色いおじさんのナイトキャップを見て、ふと思ったのだ。このナイトキャップ被ることで、「パパの枕はクサい」という問題が払拭できるのではないだろうか。

俺は急いでナイトキャップを探しに東急ハンズまで出かけた。


売ってない。

今の時代のようにアマゾンやらでポチッと購入できるような時代ではなく、当初、情報も少なかったこともある。

が、ないものは作ろうってなわけで、「自作のナイトキャップ」を作ることにした。まぁご存知の通り私、洋服屋の息子さんでもあり、お裁縫が得意で、ミシンなんかもスイスイ使えてしまうという主婦真っ青な技能の持ち主でやんす。

最初はタオルなんかを利用し、シルク布地を買ってきたり、いろいろ試行錯誤し、、、、現在に至る。今ではすっかりナイトキャップは「当たり前」の代物で、パンツとシャツとナイトキャップが、目下アタシのパジャマスタイルなのだ。もう何十ものナイトキャップを使いふるしては自分で自分用のナイトキャップを制作し、今日に至る。


先日、天日で家族の枕を干していたとき、息子が、

「お父さんの枕って匂いがしないね。」と言ってきた(今ここ)

オイオイオイオイオイ、おめぇさんの「クサい」という一言に悩まされ、ナイトキャップを被って・・・いや、結果オーライなのか(笑)

この瞬間、俺は「枕がクサイ」を克服したのだWWW。長かったWWW。


かくして、10数年経った現在、もう生活必需品となり、その理由すら忘れてしまっていたナイトキャップのありがたさを今、再び思い出すことになった。

ナイトキャップ・・あなどりがたしWWWW。

でもこんなネットでなんでも買える時代になっても三角ナイトキャップって売ってないんだとねーほんと。50過ぎて今更だけど、加齢臭の話題には萎えるよ。ほんと。おじいちゃんおばあちゃんってなんつーか線香臭いというか、白檀の匂いというか、一種異様な香りを想像してしまうが、俺もそんな雰囲気なのかな?まだ違うと信じたいけどね。

“ナイトキャップ” への1件の返信

  1. ナイトキャップについて、これほど語れる日本人がどれだけいるか。。。

    でも、男のナイトキャップって確かに珍しい印象だ。昔のドラマとかアニメとかでお母さんがナイトキャップをしている描写はみたことがあるような気がするが男のナイトキャップねぇ。
    言われてみればサンタクロースもそうなのか、スネ夫はそうなのね。そういえばトムとジェリーでもナイトキャップはあったな。

    で、ramはそのヘビーユーザーだと。
    男の皮脂は多いから、枕に頭皮の皮脂の匂いが付くのはよくわかる。男兄弟がいない女の子が、彼氏と初めて同棲したときにビックリするのが、男特有の皮脂による枕の汚れだったりするけど、気を使ってストレートに言ったりしないからね。
    そういう意味ではまさに子供の率直な感想と言うのは厳しいね^^;

    洗濯モノを干していた時に蘇ったナイトキャップの思い出。楽しく読ませていただいた。

    にしても、ramジュニアは男子なのにそういうチェックをするのね。結構なオシャレさんかも知れない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

wp-puzzle.com logo

Optionally add an image (JPEG only)