3年ぶりの新年会は闇への入り口

俺には毎年一度は必ず飲みにいく(いってた)友人がいる。かつての職場の同僚で、社長の従兄弟という鳴物入りの肩書きで入社してきたSEだ。
俺より2歳年下で数学博士でめちゃくちゃ頭が良い。身長190とでかい、アメフト体育会系で毎日筋トレを欠かさず、牛乳1リットル腰に手を当てて一気飲みする健康優良児だ。
彼はかつて嫁が癌で他界し、その経緯を巡り人間不信に威陥った。(現在は再婚し、再婚相手との間にも男の子が産まれ、今度小学校一年生なのだそうだ。)
彼は、精神的に病んでいるとき話を聞いてくれる同僚は多数いたが、親身に相談に乗ってくれる友人は俺しかおらず、その他大勢の上辺だけの愛想付き合いの同僚に嫌悪感を覚え、会社を辞めてしまった奴だ。俺しか信用できる友人は居なかったそうで、その頃から年一で飲むようになった。かれこれ30年の付き合いだ。
親身に話を聞いたというか、それは当たり前のことで、そりゃ嫁さんが病んでるときに精神的に追い込むようなことは言わない。その辺りの配慮がかつての同僚には無かった。俺にはあった。それだけのことの様子だ。

慕ってくれる同僚と毎年年末は盛大に家族ぐるみで飲み会をし、彼は我が家で一泊し、朝牛乳1リットル飲むのを家族で眺め「おーう」とため息をついたものだが、コロナ以降直接交流も途絶え、今年実に3年ぶりに二人で新年会を行った。
三年。短くも長くもある。例えるならば我が家の一真は中学三年間全てのイベントが吹っ飛んで、修学旅行もなく、散々な中学校生活を終え、今は高校生になったという、そんなコロナ青春三年間話。

わずか三年の間に何があったのかわからないが、そいつは別人のようだった。角刈りはよしとしても黒髪が白髪頭になり、頬はやつれ、まるでガンジーのようだ。それでもガタイはデカいので、十分威圧感はあるのだが、かつての覇気が無い。
北千住で飲み会を行ったが、一真の話を笑い話で挟む余裕もないほど、彼には様々なメンタルを潰す出来事が押し寄せた様子で、ここには書けないが、家族間、親戚間で落ち込み、並んだ挙句、白髪頭になったのだ。
彼は別れ際、涙を流し「RAMちゃん変わってなくて良かった。嬉しい。ほんと出会えたことが嬉しい」と泣きながら笑って、また近いうちに会おうと帰っていった。

俺は泣き崩れるかつての同僚と抱き合い、それでも同調して泣くことが出来ず、「相談事があったら言ってくれよ。」と、歯の浮くようなセリフを伝え、あまりの激変ぶりにただただボーゼンとするだけだった。
帰りの電車でも悶々とし、「困った人を目の前に「相談事があるなら言ってくれ」なんてよく言うよな。」と、ふと、自分に降りかかる。これじゃ彼が嫌悪したという、かつての同僚と同じじゃんか。

いやいや俺にしてみても、ここ3年でいろんなことがあった。特に先日、デュアルとのリモートでもゆきちゃんの衝撃的な話をしたばかりだが、ある意味、想像を絶するような体験をしてきたではないか。
それでも俺は笑顔で生活できているのはなぜ。なぜなんだろう。家族との関わりはそれほど俺の心にゆとりをもたらしているのだろうか。この「新年会」という二人だけの地獄のイベントは暗黒面を覗かせてくれた。

ここ数年コロナの最中、ほんとロクなことがない。例えるなら細い細い人生の一本橋を綱渡りし、さらに先行きが解らなくなった蜘蛛の糸ほどに細くなってしまったコロナの道を突き進む。並行して進んでいる同僚や仲間が次々とバランスを崩し、奈落の底に落ちていく。一度転落したら止めどもなく落ち続ける・・・そんな感覚だろうか。

そして今日、俺は会社に出社している。

実に2週間ぶり。もちろんテレワークで働いていたが、特に今日出社する必要は無かった。テレワークの方が効率よく作業が捗るのだが、単に社会との関わりが2週間途絶えると、感覚的に「このままずっとテレワークで過ごせないだろうか」という恐怖感に苛まれ、会社に出てきたというわけだ。
会社にくると、いつも通りの空気が流れていた。天気も良く、会社に出てくることで社会とのつながりを取り戻した感もあり、精神的には落ち着いている。

世の中は想像を絶する不況の波と不幸の波が押し寄せており、一歩足を踏み入れるとそこはもう奈落の底だということがよくわかった。
テレビでウクライナ中継をおかずに、中国の排他的なマスゲームを摘みに飯を食べている場合ではなかったというオチだWWW。

“3年ぶりの新年会は闇への入り口” への2件の返信

  1. うーむ、「三年ぶりの飲み会で友人の変貌ぶりに動揺したの巻」みたいやね。
    しかもめっぽう弱っていたわけだから動揺するのも仕方がない。うん。
    さらにさらに、その動揺が「得体のしれない不安感」に変わったようで。。。
    そういう時に出勤することで気分転換を図る。
    これを自然にやってのけるのは流石だ。うん、気分転換。重要。

    一般的に、人間って「最大のリスク」を正確に把握していないと不安におおわれるっていう。頭の中の想像が暴走してしまうらしい。暴走すると動けなくなる。

    人間の最大のリスクってなんだろね。死ぬこと?
    でも、人間いつか必ず死ぬよね。
    不況で仕事が無くなること?無くなったら探すしかないし、探してダメなら生活保護という社会制度もあるよね。

    こんな風に考えると、最大のリスクって、ひとそれぞれ違うだろうし、それぞれが考える最大のリスクを迎えたとしても、やることは「次に進む」しかないのかな。。。。少なくとも不安感で動けなくなって、体調崩すことだけは避けたいね。

    そのためにも「気分転換」

    先行き不透明な世の中を生きる上では最も重要なスキルかもしれない。

  2. うーむ、俺の得体の知れない文章を序文の3行でまとめてしまうとは・・・デュアルすげーな(笑)。
    俺が得体の知れない不安感に動揺した一因は「振り幅」。
    俺の周囲には振り切ってる奴が多すぎるので参考にならない。物事には限度っつーものがあるだろWWW
    いやまて、俺自身ある意味振り切ってるのかもしれない。自分がよく解らないWWW
    なんか宗教絡みで殺される奴は出てくるわ、痴話喧嘩で一家離散する奴はいるわ。
    一番身内の弟なんざ、生活保護受け50過ぎてもパンクやってる。こいつに至っては何に悩んでるのかも不明だWWW

    俺は今日も会社に出社し、雑踏の中に平穏を見つけている。
    デイトレーダーのようにモニターを4台並べ、並列処理をさせ、監視システムをチェックしつつ、「この文章」を書いている。
    手元には携帯が暗視状態で、ドラクエが絶賛稼働中だ。一見仕事していないように見えるが、このぐらいがちょうど良い。実に健全だ。
    こういった「振り幅」に収まる奴が俺の周りに居ないのだ。ふと、恐ろしい言葉が頭をよぎった。

    るいとも・・・orz。

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