異世界モノのアニメがアツいという話題に関連して、一つ自分なりの掘り下げをしたいと思う。
私の視聴する映像コンテンツ。物語系のコンテンツに限って言うと、その傾向として、ドラマとか映画より圧倒的にアニメ作品が多い。
その要因として、一話の時間が30分ということが最も大きいのではないかと思う。
一般的なドラマは一話が約1時間。映画に至っては2時間。そんな中、アニメは俺らが子供の時代から30分の原則が続いている(昔は30分のドラマとかもあったような気がする)
これは視聴する側の集中力の継続時間の要素も絡むし、作る側の演出・構成力なども絡むと思うが、その最適解が今のところ30分なのではないかと思う。
スマホの登場による「隙間時間」という概念が市民権を得たのも大きい。より、短い時間で楽しめるコンテンツがウケる。そういう時代なのではなかろうか。
そして何より30分という限られた時間で観るものをひきつける映像コンテンツとして、アニメの右に出る映像コンテンツはないのではないか。
30分で楽しめるコンテンツ。この求心力を持つものに引き寄せられる。
そう考えると、アニメを多く観ている最近の自分に腑に落ちるんだよね。
俺は仕事柄、近年のアニメで昭和とはまるで異なる制作風景を見ているので、デュアルテーマ(アニメがウケる件を)「制作サイド」から掘り下げようと思う。
とにかくアニメの製作費は撮影の現場と比べて圧倒的に安い。どれくらい安いかというと、実に10倍どころか100倍近く安いのだ。
動画撮影はとにかく天候の問題や演者のご機嫌はさておき、撮影するにはスタッフが最低10人は必要だ。ざっくりと照明、音声に加えキーパンチャー(時間を管理する記録係)、カメラを回す撮影クルーが2、3人。モニター(撮影内容を確認する場所も)。これにディレクションする人と監督、助監督が加わり撮影が始められる。(もちろん演者も含むのだがここには入れていない。)まぁTVのドラマの撮影だと大道具さんを入れない現場でも軽く30人は動いている。撮影が終わったら引き続き編集作業が待っている。音声さんは声優さんと効果音と別々に編集する必要がある。加えタイムコードを合わせ、カットカットのオンパレードで20時間撮影したテープを2時間にまとめるっていうわけだしこりゃ只事じゃ無いよねー。監督が厳しい人なら曇りの撮影なら曇り空、晴れの撮影なら晴れ間がでるまで撮影が始まらないし。さらにはコマ割りに「監督のくせ」が反映される。役者の台詞回しは長ったらしいし、ゴリ押しでジャニタレやAKBなんかの素人も紛れ込んでくる。いやはや日本のドラマは見るに耐えない。(阿部寛主演の「結婚できない男」は面白かったです^^)
一方アニメは制作革命が起きている。まずセル画の廃止だ。一秒間に30フレーム。アニメーターと呼ばれる人たちがノイローゼになりながら色を塗り分ける時代は終わった。
丁度2000年を境にデジタルに移行し、もうすでに20年が経過した。
スタジオジブリの作品もハウルの動く城あたりから積極的にデジタルに取り組んでいる。何千何万枚とかきあげる「セル画」という文化は今や「化石」扱いだ。
制作の土壌も変わった。当時のスーパーコンピュータが今のパーソナルコンピュータという演算能力の発展とソフトウェアの進化。
俺も使った事があるMAYAや3DS MAX、ARNOLD、そして圧倒的支持があるMOTIONBUILDERなど、パソコンがハイエンドになったお陰で作者は自由に三次元空間を動き回り、その決まったアングルが決定レンダリングポイントになる。アングルをグループ化すれば例えばルーティン化された登校や授業風景など、なんの苦もなく登場人物はもちろん時間設定も天候も思いのままだ。
更に更に、これらを使ったレンダリング素材の無償提供(パブリックドメイン)がもう無限大に存在する。それこそ20年分の資産運用だ。CGなので、張り込みするピクチャを変更するだけで使い回し引用が可能だ。背景はもう無限大。
パーソナルユーザもVFXを使った壮大なパブリックドメインや有名な俳優が元のスカイウォーカー財団のモーションキャプチャ素材など、とにかくフリーな素材環境がてんこ盛りなのだ。歩く走る掴むなどの初動操作をいちいち絵コンテに起こす必要など皆無。例えばアクションの時間を2秒と決め「しゃがんで走る」というコマンドを入れるだけで、女性なら女性らしく男性なら男性らしく、オタクならオタクらしく決まったインサートタイムでしゃがんで走ってくれる。カメラアングルもカット割も自由自在。当然デザイン学校の学生は日々フリーで使える素材をクラウド化しているし、特殊な(例えば鯨の泳ぎ方とか、蛙の飛び方とか)生き物もあらゆる素材がフレーム化され、フリー素材で出回っているのだ。今や「アイデア」さえあれば、それこそ三人で映像を手がけ、三人でSE効果と音響、そして音楽を手掛ければもう立派なスタジオの完成という時代だ。学園もの、魔物物など、舞台で学校や都市などなんでもござれ。「あの背景なんだっけ?と悩む必要もなければ予算を気にする必要もない。天候も役者の機嫌を損ねることもないのだ(笑)。仕上げたい場所に仮想カメラを設置するだけでレンダリング開始。奥行きの距離感も陰影も全てコンピュータが計算してくれる。セガサターンのバーチャファイターのようなカクカクのCGではなく、もうすでに「これ2次元アニメなの?3次元を二次元にしてるの?」すら見分けがつかないレベルになっている。
極め付けは作業分担映像24時間稼働クラウド!。とくに発展途上国の台頭がすごい。今や日本のアニメのほとんどがインドで制作されているといっても過言では無い。コンピュータの演算能力が早くなったとはいえ、フルCGデータは膨大で、レンダリングをさせる時間がネックとなる。FullCGを態々2次元のセル画に書き写すかのようなスケッチプラグインまで普通に存在する。でも慌てることはない。クラウド分業の体制が立ち上がっているからだ。
アニメータもしくはディレクターは色設定と進行を決め、コンピュータでシーンを割ってアングルを決め(モニター上にカメラや照明を設置し)、インドに発注して日本はおやすみ(寝る。)寝ている間にインドでレンダリングし、朝には納品。あとはアフレコ入れて効果音をつけて完成。天候にも左右されず、季節も役者も自由自在。おまけに低予算だとくれば役者を使ったドラマや映画より作品数が伸びるのは頷ける話だと思う。
続いて時間。おそらく30分番組というのは手塚治虫氏率いる虫プロダクションが「アニメ番組は」限界時間を割り出したんだと思う。これはセルアニメの限界時間だ。俺らの子供の頃、欧米のアニメは全てショートムービー。ポパイやチキチキマシン猛レース、トムとジェリーなんかも10分前後のショートムービー。現在も「機関車トーマス」「スヌーピー」などもショートフィルム、ショートムービーで構成されている。ところがジャパニメーションはここから覆してしまった。1時間を30分に割ってしまうのは、日本の文化が色濃く反映され、世界に普及したのだと思う。CMを考慮して10分〜15分でCMに入る前の繋ぎが入って1構成。日本特有だ。同じジャンルで動画でも「あばれはっちゃく」「柔道一直線」「ポワトリン」「仮面ライダー」「レンジャー」なども30分。つまり日本は「枠」を買い取るシステムで30分が一つの単位なのだ。必要以上にお金がかかるドラマは30分番組では製作費も嵩み元も取れない、アニメは30分が制作限界。この差が面白いじゃーないですかWWW